タイプ ワイルド

東京。眠らない街、いや眠る事のない街である。誰かが通勤し誰かが退勤する事で日本国内の経済を担い、酒池肉林を手に入れる為に乾坤一擲に人生を委ね成功し、またはその逆で失敗し地方に帰る人間もいる。首都東京は光と闇の狭間に夢が有り、どちらに行くかは己次第だ。

東京という世界有数の大都市を遡れば1590年の豊臣秀吉による北条征伐以降、徳川家康が左遷されたのが始まりだ。それまでの関東地方は地域性が悪く、色々な大名が頭を抱えた地域である。その中で徳川家康は関東地方を開発し皇居は京都から東京に遷都され、今や首都になり、東京オリンピックは2回行われ、高度経済成長には首都高速道路東名高速道路の開通し、新宿駅は世界で一番利用者数が多い駅になり、新幹線は日本が世界に誇る発明だ。
何故、私が今回、東京に焦点を当てたのかと言うと舞台は東京だからだ。では早速行ってみよう。
あれは、一月下旬。私は恋愛氷河期真っ只中だ。向いていないマッチングアプリと睨めっこし毎回私が笑ってしまい負けている。只、今回は負けはしなかった。マッチングして会話が続いていく。年齢は35歳で東京生まれの東京育ち、我々北関東の人間からすれば生粋の東京23区育ちは都市伝説かと思っていた。
顔は私が大好きな山崎ケイに若干似ているのでここからは「K」という仮名を使っていく。体型は私が大好きな豊満であり、これは是非とも四股を踏みドスコイしたいと内心思いながら他愛もない話が続いた金曜日に漸くラインの交換が出来た。
未だにライン交換の際が分からなくて、ダラダラやり取りして相手が冷めて連絡が来ないのは日常茶飯事だ。
金曜日の夜に電話をした。きんたまキラキラ金曜日とはまさにこの事である。有難う金玉。
電話の第一印象は声が物凄く綺麗で簡潔に言えばエッチなお姉さんである。人に人のエッチなお姉さんは居ると思うが、今回は私に合わせてくれ。
内容と言えば最初はお互いの仕事の話や趣味等だ。生粋の東京人だからかCOVID-19が未だに治まる事がない世の中で、Kは濃厚接触者3回目らしくて最初聞いた時は流石東京と思った。Kはファッションが好きで、拘りと東京のプライドなのか栃木県の男性ファッションは「良い意味で」ダサいという。栃木県からしてみれば大きなお世話だが魅力度ランキング最下位の栃木県は文句は言えない。
Kと段々話していくうちに下ネタに転換した。今思えば濃厚接触者でホテル隔離のKはストレスが溜まっていたのであろう、Kの方からSEXの話をしていき、最初の真面目な話なんか忘れた。エスカレートしてお互いがSEXしたくなりバブル遺産のテレフォンSEXを少しした。
Kは私に「声が好きだし別に顔とか服は私が染めるから付き合ってもいいよ」と言ってきた。恐竜は氷河期に伴い絶滅したが私は絶滅しない。そして、次の日に会う約束をした。
次の日になり私は通院が終わった旨をKにする為25年の人生で初めてモーニングコールをした。モーニング娘みたいにモーニングコーヒーは飲まなかった。Kは寝起きであり、その声は色気がある。35歳の百戦錬磨のお姉さんは20代とは全然違う美しさ、艶やかさ、麗しさがある。そしてモーニングコールでは今日の打ち合わせをした。今から会いに行くか夜に会いに行くか。恋というから愛にきたとは言ったものよ。Kは電話で私に早く会いたいと言う。正直、私は嬉しかった。春が来るのだ。松任谷由実よ有難う。マジひゅるりーらて感じ。
今から会いに行っても良いが仮にどちらかが気に入らないと気まづいので二人で相談し敢えて夜にした19時半に池袋集合だ。
私はウキウキルンルンで池袋に向かった。車内はトム・ブラウンのラジオが鳴り脳内では非リア共への宣戦布告を考えていた。高速を降りてからの田舎者が車で行く池袋は容易ではなく結構迷った。
そして漸くKと対面する事になったのだが、Kは私に「タイプじゃない」と第一声を発した。「こんばんは」でも「はじめまして」でもなく、「タイプじゃない」という前代未聞の言葉を投げかけてきた。
ジェットコースターを乗った事はあるか?ゆっくりゆっくりと最上迄向かい最上に着いてゆっくりゆっくりと下に落ちていく、あの感じをジェットコースターに乗っていないのに体感した。タッキーand翼もまさかそうとは思ってないだろう。
ジャック・オッフェンバックが作曲した地獄のオルフェは運動会の定番だが最早スタートにも辿り着けない地獄である。芥川龍之介蜘蛛の糸より早く赤い糸は切れた。最初から赤い糸というのは存在していなかったのだ。
そして、取り敢えずは車を走らせたが正直、第一声が「タイプじゃない」で私の心は廃れ会話が出来なかった。昨年のコミュニュケーションが取れない女とのデートの雪辱を果たしたかったがそれは叶わぬ夢に終わる。
悲しんでいる私を見兼ねてKは「悲しませたからSEXだけして帰ろうか」と心の底から何を言ってんだこいつは?てなったSEXでなった。SEXは本来、私からしたら嬉しい気持ちいい筈であるが、この時ばかりはそうはならなかった。このまま帰るのも残念なので私はKのSEXを受け入れた。これが本当の対戦なのかもしれない。そしてSEXだけをする為適当な浦安のラブホに経由した。浦安のラブホはビジネスホテルみたいな感じで田舎のラブホより狭かった。ホテルに着きKはベットインした。私はガッカリしていたのでちょっと椅子に座り空を見上げた。天井だった。するとKが「SEXしないなら私寝るよ」と言ってきたのでベットに入り巨乳を揉んだ。そして熱くて寒いきんたまキラキラ土曜日が始まったのだ。初めてSEXがつまらないと思った。私はオナホールなのか?と思った。Kは「そう言えばローション持って来たんでしょ?使う?」と言ってローションを使い真っ暗な風呂場でローションプレイを堪能した。ガッカリしてもローションプレイだけは裏切らないしやっぱりソープ最高。
Kは自分の体型がコンプレックスなのか風呂場も部屋も見えるか見えないかの瀬戸際くらいの真っ暗にした。ローションプレイが終わり風呂場でローションを流してまたベットインしてKにもインして果てた。遅漏に戻ったのかと思うくらいに遅かった。それもそうだろう、精神的苦痛を味わったのだ。SEXに集中出来ていない。SEXが終わりKはそそくさと着替え私も着替えてラブホから出た。帰りの車内で私は常々、「タイプじゃないけど」と敢えて嫌味をずっとKに言った。そしたらKが憤り「私が悪いの?」と言ってきた。初対面の第一声が「タイプじゃない」てそれは悪いだろう。Kは「ラインてブロックしていいでしょ?」と訊ねてきた。振られて明日からまた何も無かったように連絡すると思うのか?そこまでイカレてはない。それを伝えた。
Kとそろそろ別れる短くて長い天国と地獄は終わりを告げる。Kは「私も頑張るから君も頑張って」とこの人物は私を怒らせるのが得意なのか?そして、出会った場所に着きKは車から降りた。私は人生で初めて人の顔を見ないで別れを告げた。これで私の春はまた遠のいた。恋愛氷河期はまだまだ解ける事はないのであろう。正直に話すと私は半分好きになってたし今回は上手く行くと思ってたが、考えもしない場所に落とし穴はある。Kと別れて私は愚痴と悲しさを紛らわせる為に友達に電話した。みんな口を揃えKが悪いという。良かった。
今まで、インスタグラムの親しい友達の使い道が無いと思っていたが恥ずかしい話、漸く使い道が分かった。
私は今日も氷河期を溶かす為に向いていないマッチングアプリと睨めっこしている。眠る事のない街東京で喜怒哀楽を一瞬にして味わった冬、もうすぐ春が来るが私の春はいつなのか分からないが段階は踏んでると思うから諦めはしない。